【イラスト図解】防毒マスクの選定、着用
初心者、女性向けの防毒マスクの入門ガイドとして下記のポイントをメインに解説しています。
・防毒マスクの付け方、選定
・防毒マスクの種類
・防毒マスクの耐用年数、使用期限
・防毒マスクの保管、手入れ
・防毒マスクのおすすめネット通販商品
・防毒マスク 使い捨て
・防毒マスク 吸収缶の選び方
併せて防毒マスクのアクセサリーも掲載しました。
ご参考になれば幸いです。(^_^;)
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防毒マスクとは?
防毒マスクは,ろ過式呼吸用保護具の一種で,着用者の肺吸引力によって吸引する空気中の有毒ガスなどを除去する方式のものです。
防毒マスクには,いろいろな種類があり,その選択や使用方法を間違えると,大きな事故につながるおそれがありますので,十分に注意する必要があります。
防毒マスクの構造別種類
隔離式
隔離式は,面体,連結管および大型吸収缶で構成されています。面体と吸収缶とが離れていて,連結管で接続されているため,隔離式と呼ばれています。
隔離式防毒マスクの例
直結式
直結式は,面体および吸収缶から成っています。中型の吸収缶が使用され,吸収缶が面体に直接つながうているため,直結式と呼ばれています。
直結式防毒マスクの例
直結式小型
直結式小型は,面体および吸収缶から成っています。構成は直結式と同じですが,小型の吸収缶を用いるため,直結式小型と呼ばれています。
直結式小型防毒マスクの例
画像出典先:保護具ハンドブック 社団法人 日本保安用品協会編
防塵マスクと防毒マスクの違い
防塵マスクとは、作業等で発生する粒子状の物質を、口や鼻から吸い込まないようにするための呼吸用保護具です。 細かな粒子が、気管支や肺に侵入し、障害を起こすのを防ぐために防塵マスクが使用されます。 防毒マスクとは、環境に存在する有毒ガスを吸収缶で除去し、吸入する空気を浄化するためのマスクです。
普通のマスクとの大きな違いは?
コロナウイルス、花粉症等でよく目にする不織布のマスクとは違い、防塵マスク、防毒マスクは国家検定という規格があります。
この規格は、防塵マスクであれば、粉塵の捕集性能、防毒マスクであれば、使用する吸収缶の浄化性能等の規格です。
作業において、防塵マスク、防毒マスクを使用する際は、厳しい規格の国家検定に合格しているものを使用しなければいけません。
防塵マスクは顔への密着性が高く、粉塵の捕集性能が高く、防護性が高いマスクです。
防毒マスクの正しい選び方
防毒マスクを選択する場合には,次の事項を考慮する必要があります。
国家検定に合格した防毒マスクを選ぶ
(1)国家検定に合格したものを選んで下さい。国家検定は,厚生労働省の規格に基づいて行われ,国家検定に合格したものには,検定合格標章が付いています。
ただし,国家検定の対象品は,5種類に限定されていますので,対象外のガスに対しては,JISおよびメーカーから出されているデータなどを基にして,適切な吸収缶を選んで下さい。
吸収缶別に防毒マスクを選ぶ
(2)吸収缶は,どんなガスにも有効というわけではありません。吸収缶の種類によって,除去できるガスとそうでないガスとがあります。この区分はメーカーによって若干の相違がありますから,メーカーから出されているデータを参考にして,作業環境に適した吸収缶を選ぶ必要があります。表4に吸収缶の種類と適応ガスー覧表のー例を示します。
気密性別に防毒マスクを選ぶ
(3)目を刺激するガス(亜硫酸,塩素,アンモニアなど)に対しては,全面形面体を用いるとよいでしょう。半面形面体と密閉性の良い保護めがねとの併用も可能ですが,この場合は気密が不十分となる場合がありますので,注意が必要です。
フィルター有無で防毒マスクを選ぶ
(4)ガスと粉じんなどが混在している場合は,フィルタ付きの吸収缶を使用して下さい。
濃度別に防毒マスクを選ぶ
(5)濃度に応じてマスクの構成を選んで下さい。一般に,高濃度には隔離式,中濃度には直結式、低濃度には直結式小型が使われます。
(6)吸収缶の能力として対応できても,ばく露限界濃度(注)より著しく高い環境での使用は望ましくありません。防毒マスクが使用できる濃度の上限を表4に示します。
(注)ばく露限界濃度とは,ほとんど全ての労働者が連日繰り返しばく露されても,健康に有害な影響を受けないと信じられる環境条件の限界。日本産業衛生学会の許容濃度,ACGIH(米国産業衛生専門家会議)のTLVなどがある。
形状およびサイズにあった防毒マスクを選ぶ
(7)着用者の顔に適合する形状およびサイズの面体を用いたマスクを選んで下さい。
表3 吸収缶の種類と適応ガスー覧表の一例
○:適合する △:使用できるが長持ちしない ×:使用できない
(注)メーカーによって仕様が異なるので,メーカーの取扱い説明書によること。
表4 防毒マスクが使用できる有毒ガスなどの濃度の上限
種 類 | 全面形面体付きのマスク | 半面形面体付きめマスク |
隔離式 | 2.0%ただし,ばく露限界の45倍 | 2.0%ただし,ばく露限界の9倍 |
直結式 | 1.0%ただし,ばく露限界の45倍 | 1.0%ただし,ばく露限界の9倍 |
直結小型 | 0.1%ただし,ばく露限界の45倍 | 0.1%ただし,ばく露限界の9倍 |
(注)ばく露限界の倍数は,JIS T 8150 (呼吸用保護具の選択,使用および保守管理方法)
(2003年度審議終了)に記載されている防護係数です。
使い捨て 防毒マスクを選ぶ
複雑な吸収缶と面体の組み合わせを考える手間、それぞれを保管やする管理の手間も必要ない、短期間で衛生的に使い切りたいというニーズにお応えする防毒マスク。
但し、塗装作業場で、使い捨て式の防じんマスクを着用する場合、たとえ活性炭を使っていても防臭目的ですので、有機溶剤蒸気には効果がありません。
塗装場では、必ず、有機溶剤用の防毒マスクを使用してください。また、蒸気・ガスと粉じんが同時に存在するような作業場でも防毒マスク吸収缶の前に装着する防じんフィルターや防じん防毒兼用マスクを使用してください。
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メーカー別 防毒マスクの選び方 |価格 比較
興研 |国内の防塵・防毒マスク2大メーカーの一つ
国内トップシェアを誇る「防塵マスク」を基盤に防毒マスク及び送気マスクの標準品の設計及び製造している。
興研の呼吸追随形のブロワーマスクは、吸気時だけブロワー(電動ファン)が作動し、従来のブロワーマスクの弱点である呼気時の息苦しさを解消。まるでマスクを使っていないような自然な呼吸を実現した世界初の画期的な製品。
おすすめ商品: 興研 直結式小型防毒マスク 1721HG-02型
原産国:日本
材質:面体部/天然ゴム 目ガラス部/ポリカーボネート ろ材ホルダー部/ポリプロピレン 尾錠/ステンレス
規格:直結式小型防毒マスク
吸気抵抗:45Pa
排気抵抗:6Pa
国家検定合格第TN175号
※吸収缶別売
重松 シゲマツ |国内の防塵・防毒マスク2大メーカーの一つ
産業用防毒マスクの占有率、高く、官公庁向けの実績もあり、防毒マスクがメイン商品。
防塵マスクを初めとし防毒マスク、送気マスク、電動ファン付き呼吸用保護具、空気・酸素呼吸器、保護めがね、保護衣類の製造、販売しているトップメーカー。
おすすめ商品:シゲマツ(重松製作所) 防毒マスク半面形面 サイズM GM77-M
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●直結式小型防毒マスク
適応吸収缶:CA705/OV・CA707/OV・CA710/OV・CA705S/OV・CA707S/OV・CA710S/OV・CA705L/OV・CA710L/OV
●国家検定合格:TN5号
●備考:熱可塑性エラストマー製ダブルアクション接顔体
防毒マスクの正しい装着方法
① しめひもの上部を後頭部に安定するようにかける。
② しめひもの両端を持ち、左右に均等にひきながらマスクを顔面にあてる
③首の後ろで留め具を留める
④装着し、マスクを上下左右に動かし安定する位置に調整する
⑤必ず「フィツトテスト」 を行い、装着完了
画像出典先:知っておきたい保護具のはなし
防毒マスク フィットテストとは
防毒マスクのフィットテストは義務化されています。
フィットテストとは計測機器等を用いて呼吸用保護具が顔に密着しているか、漏れ込みがないかを評価する方法です。その方法は、JIS T 8150で定められています。顔面にフィットした保護具の選定を出来ているか、正しく使用出来ているかの確認を目的に行うものです。
フィットテスト方法としては下記の方法があります。
定量的フィットテスト
専用の機器を用いて面体の中と外の粒子の個数を計測し、呼吸用保護具の顔面との密着性の程度を確認します、短縮型は、5分程度で測定可能です。
定性的フィットテスト
被験者がフードを被り、フードの中にサッカリンなどを噴霧して、甘味成分である味覚の有無で密着性の程度を確認します。
推定測定所要時間は1人15分程度です。
防毒マスク 吸収缶の選び方、付け方
吸収缶は対応可能ガス以外のガスに対しては効果が少なく、時には全く効果がないことがありますので、必ず作業現場のガスの種類に合わせてお選びください。
国家検定規格ではハロゲンガス用、有機ガス用、一酸化炭素用、アンモニア用、亜硫酸ガス用の5種類とそれぞれのろ過材を含めた10種類が規定されています。また、上記以外に、日本産業規格により酸性ガス用、硫化水素用などが規定されています。
防毒マスク 吸収缶の仕組み
吸収缶でガスを除毒する方法は、ガスの種類によって異なり、以下の方法が採用されている。
物理吸着(主に有機ガス用など)
環境空気中の有毒なガスを活性炭などで吸着して、呼吸に適した空気のみを通すやり方、気体の分子・原子が、物理的引力によって吸着されます。
有機ガスの場合のガスの除毒の原理は物理吸着です。
吸収缶の主剤となる活性炭は、非常に微細な穴(細孔)が形成されていて広大な表面積を持ちます。
活性炭の表面には引力(ファンデルワールス力)が生じており、気体中の分子が引き付けられ吸着し、凝集、液化し、毛細 管現象により細孔内に有機ガスが保持されています。
活性炭の粒子には、非常に多くの細かい穴(細孔)があるため、たいへん大きな表面積(1000~1500m2/g)となります。この表面積が大きいと吸着できるガスの量も多くなります。また、活性炭には比較的多くのガス吸着に適していることから、有機ガス用の吸収缶を始めとして、防毒マスクの吸収缶の基材として多く採用されている。
化学吸着(ハロゲンガス、酸性ガス、アンモニア、亜硫酸ガスなど無機ガス用)
有毒ガスを金属酸化物、アルカリ剤などによって中和し、吸着させるやり方、吸着剤と吸着物質の化学変化によるもの。酸性ガス用吸収缶では、アルカリ剤の入った吸収缶によって酸性ガスを中和しています。
触媒反応(一酸化炭素用)
有害ガスを酸化などによって毒性のほとんどないものに無害化し、又は吸着されやすい物質に変換すします、一酸化炭素用吸収缶を例にすると、一酸化炭素を吸収剤であるホプカライトの触媒作用により、毒性の低い二酸化炭素に換え無害にします。
いずれも、吸収缶の種類ごとに、対応可能なガスが定まっており、このガス以外は効果がないので要注意ポイントです。
除毒能力に及ぼす要因
吸収缶は、吸収剤がガスにより飽和してしまうと、吸収されなくなり、有毒ガスが除去されずそのまま漏れてしまいます。この状態を破過、それまでの時間を破過時間といい、吸収缶やガスの種類によって異なります。破過時間に影響を及ぼす要因をいくつか挙げます。
●ガス濃度
一般にガスの濃度が高くなるほど破過までの時間は短くなる。吸収缶に吸着できるガスの量には限度があるので使用時間とガス濃度の関係は、ほぼ反比例の傾向にあり。
●ガスの種類
同じ濃度のガスでも、ガスの種類によっては吸着されやすい(破過時間が長い)物質、されにくい(短い)物質があり、これは、主にガスの沸点、分子量、蒸気圧の違いによるものと推定されます。
主な傾向として分子量が大きいものほど吸着しやすい、沸点が高いものほど吸着しやすい、 蒸気圧が低いものほど容易に吸着しやすいです。
●湿度の影響
有機ガス用吸収缶など吸着剤に活性炭を使用したものは、水の分子が活性炭に吸着されますので、高湿度環境下では破過時間が短くなる傾向があり、一酸化炭素吸収缶も触媒の反応が十分に行われず短くなります。
これに対し化学吸着を行う吸収缶の場合、化学反応にある程度の水分が必要なため、湿度の高い環境でもほとんど破過時間に影響を与えません。
●温度による影響
有機ガス用吸収缶は物理的に活性炭内の小さな穴にガスの分子を吸着させます。このため、 高温環境下では、分子の動きが活発化することで吸着されにくくなり、破過時間が短くなる傾向にあります。逆に、化学吸着や触媒反応を使用した吸収剤では、化学反応を促進させるため、破過時間が長くなる傾向にあります。
●例外的な一酸化炭素用吸収缶
一酸化炭素用吸収缶は、今までの例とは全く異なります。触媒作用で一酸化炭素を二酸化炭素に変えますが、触媒は高濃度でないと十分に反応を起こしません。このため、濃度が低いと逆に破過時間が短くなってしまいます。また、反応を起こすと熱を発しますが、有効時間内でも一度使用を中断すると冷やされたときに酸化剤の表面に水分が付着し二度と反応しません。
このため一度しか使用できません。緊急時に使用される例がありますが、全くの無臭のガスですので長時間作業時や低濃度時は危険です。送気マスクや空気呼吸器の使用を推薦します。
吸収缶の種類 色
吸収缶には,対象ガスとマスクの構成とによって,表1の種類があります。
表1 吸収缶の種類
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対象ガスによる吸収缶の種類 | 適合するマスクの構成 | 規格 | ||||
吸収缶の色(6) | 隔離式 | 直結式 | 直結小型 | 国家検定 | JIS | |
ハロゲンガス用 | 灰色及び黒 | ◎ | ◎ | ○ | ☆ | ☆ |
酸性ガス用 | 灰色 | ○ | ○ | ○ | – | ☆ |
有機ガス用 | 黒 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
一酸化炭素用 | 赤 | ◎ | ○ | – | ☆ | ☆ |
一酸化炭素・有機ガス用 | 赤及び黒 | ○ | – | – | – | ☆ |
アンモニア用 | 緑 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
二酸化イオウ(亜硫酸ガス)用 | 黄赤 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
青酸用 | 青 | ○ | ○ | – | – | ☆ |
硫化水素用 | 黄 | ○ | ○ | ○ | – | ☆ |
臭化メチル用 | 茶色 | ○ | – | ○ | – | – |
リン化水素用 | * | ○ | – | – | – | – |
水銀用 | * | – | – | ○ | – | – |
ホルムアルデヒド用 | * | – | – | ○ | – | – |
二酸化炭素用 | * | – | – | ○ | – | – |
半導体ドーピング用 | * | – | – | ○ | – | – |
*:吸収缶の色について規定がなし
◎:国家検定品
○:現在製造されているもの
☆:該当する規格がある
それぞれの種類ごとに,防じん機能を有するもの(フィルタ付き)とそうで ないもの(フィルタ無し)とがあります。
また,フィルタ付きについては,吸収缶に組み込まれている場合と外付けの 場合とがあります。
粒子捕集効率によるフィルタの等級は,防じんマスクの場合と同様に表2の等級別記号が用いられます。
表2 フィルタの等級別記号
粒子捕集効率 (%) | 等級別記号 | |
DOP粒子による試験 | NaC1粒子による試験 | |
99.9以上 | L3 | S3 |
95.0以上 | L2 | S2 |
80.0以上 | L1 | S1 |
吸収缶の破過
吸収缶の除毒能力は有限であり,吸収缶の薬剤の能力が失われると,透過する有毒ガスの濃度が増加してきます。除毒能力試験において,透過する有毒ガス濃度が最高許容透過濃度を越えた状態を破過といいます。
破過時間と環境濃度との関係は,一般に下図のとおり,使用できる時間は高濃度では短くなり,低濃度では長くなります。
一酸化炭素用に限って,低濃度では触媒作用が緩慢なため,かえって破過時間が短くなるので注意が必要です。
直結式小型吸収缶 破過曲線図の例
吸収缶の交換時期、使用期限、有効時間
防毒マスクを使用する際に最も大切なことは,吸収缶が破過するまでの時間(残存有効時間)を確認して使用することです。現在のところ,残存有効時間を正確に推定する方法がありませんので,次の方法を参考にして吸収缶を交換して下さい。
破過曲線図を使用する方法
対象物質の破過曲線図(ガス濃度と破過時間の関係を表したグラフ)を用い,作業者のばく露濃度から破過時間を求める方法です。
吸収缶の使用時間を記録し,その破過時間の範囲内で余裕を見て交換します。ただし,破過時間は,対象物質の種類によって異なりますので注意が必要です。
有機溶剤蒸気については,その物質の破過曲線図がない場合でも,シクロヘキサン に対する破過曲線図を利用して,おおよその破過時間を推定する方法も提案されています。
以下に,その方法を示します。
(Ⅰ)対象とする有機溶剤のシクロヘキサンに対する相対破過比を表3またはメーカーから出されているデータを利用して求めます。混合溶剤の場合は,破過時間が最も短い物質を対象として相対破過比を求めて下さい。対象とする有機溶剤の相対破過比は,次のように示されます。
各有機溶剤の相対破過比(RBT)は、次式により求められます。
各有機溶剤のRBT = | ある有機溶剤の破過時間 |
|
|
シクロヘキサンの破過時間 |
(Ⅱ) シクロヘキサンの破過曲線図を用いて,ガス濃度から破過時間を読み取ります。
混合溶剤の場合は,各物質の濃度を加算した数値を用いて破過時間を読み取ります。
(Ⅲ)上記(Ⅱ)の破過時間に,上記(Ⅰ)の相対破過比を掛けたものを,推定破過時
問とします。
[例]アセトン濃度0.01%(100 ppm)の場合の推定破過時問を求める場合
アセトンの相対破過比は,表3を利用すると,0.51であることが分かります。
シクロヘキサン濃度が0,01%(100 ppm)のとき,破過時間が300分であるとす
ると,
アセトンに対する推定破過時間
=シクロヘキサンに対する破過時間×相対破過比
=300(分)×0.51
=153(分)
となります。
表3 シクロヘキサンに対する相対破過比
有機溶剤名 | RBT | 有機溶剤名 | RBT | 有機溶剤名 | RBT |
キシレン | 1.42 | イソプロピルアルコール | 1.15 | セロソルブアセテート | 1.77 |
スチレン | 1.68 | イソベンチルアル―ル | 1.63 | ブチルセロソルブ | 2.03 |
トルエン | 1.42 | シクロヘキサノール | 1.27 | メチルセロソルブ | 1.54 |
N-ヘキサン | j0.88 | 1-ブタノ―ル | 1.81 | 酢酸イソブチル | 1.14 |
O-ジクロルベンゼン | 1.70 | 2-ブタノール | 1.60 | 酢酸イソプロビル | 1.18 |
クロルベンゼン | 1.64 | メタノール | 0.02 | 酢酸イソペンチル | 1.17 |
クロロホルム | 0.78 | メチルシクロヘキサノール | 1.36 | 酢酸エチル | 1.02 |
四塩化炭素 | 1.06 | アセトン | 0.51 | 酢酸ブチル | 1.37 |
1,2-ジクロルエタン | 1.24 | シクロヘキサノン | 1.80 | 酢酸プロピル | 1.28 |
1,2-ジクロルェチレン | 0.89 | メチルイソブレツケトン | 1.40 | 酢酸ペンチル | 1.08 |
ジクロルメタン | 0.23 | メチルェチルケトン | 1.17 | 酢酸メチル | 0.63 |
1、1、2,2-テトラクロルエタン | 1.54 | メチルシクロヘキサノン | 1.40 | N,N,-ジメチルホルムアミド | 2.11 |
テトラクロルェチレン | 1.43 | メチルブチルケトン | 1.24 | テトラヒドロフラン | 1.33 |
1,1,1-トリクロルェタン | 1.11 | エチルエーテル | 0.65 | 二硫化炭素 | 0.41 |
トリクロルェチレン | 1.11 | 1,4-ジオキサン | 1.42 | ||
イソブチルアルコール | セロソルブ | 1.71 |
出典:Shigeru Tanaka et a1.,Applied Occupational and Environnlental Hygiene 14 (10) 691-695,1999
《注意》有機ガス用吸収缶は,温度または相対湿度が高い環境で使用すると,破過時間が短くなります。
シクロヘキサンに対する相対破過比が,1より小さい有機溶剤に対して使用した場合は,保管するだけでもその後の有効時間が短くなることがあります。(吸収缶内の活性炭に吸着捕集された有機溶剤蒸気が拡散移動しやすいためです。)
したがつて,温度または相対湿度が高い場合は,1日の使用で廃棄するようにすることが望ましい管理方法です。
吸収缶から透過する空気の交換方法、時期
ばく露限界より低い濃度で臭気を感じる有機溶剤蒸気などに対しては,吸収缶から透過してくる臭気によつて吸収缶の交換時期を判定することができます。ただし,臭覚には個人差があること,疲労することを考慮する必要があります。
吸収缶の質量増加による方法
有害物質を捕集しますと吸収缶の質量が増加しますので,その増量を測定することによつて,交換時期の目安とする方法です。
防毒マスク使用上の注意
防毒マスクを使用する際は,次の事項に留意して下さい。
① 酸素濃度が18%以上の所で使用して下さい。酸素濃度が不明の場所では,給気式呼吸用保護具(送気マスクまたは自給式呼吸器)を使用しなければなりません。
② ガスの種類と濃度が分かっている所で使用して下さい。また,環境中のガスに有効な吸収缶が装着されていることを確認して下さい。
ガスの種類が不明の場合は,ガスの種類と濃度を調査して対応して下さい。
緊急の場合は,給気式の中から防護性能の高い呼吸用保護具を選んで使用して下さい。
③ ガス濃度がその吸収缶の使用限界を超えるおそれがある時は,より大型の吸収缶または給気式の中から防護性能の高い呼吸用保護具を選んで使用して下さい。
④ 添付されている使用時間記録カードの記録と破過曲線図を比較して,有効使用時間が十分残っていることを使用前に必ず確認して下さい。
⑤ マスクを装着したら,必ずフィットテストを行って,顔面との気密が良好であることを確認してから作業環境に入って下さい。
⑥ 半面形面体にメリヤスカバーなどを付けているのを見かけることがありますが,これは面体と顔面との気密を損ないますので,使用しないようにして下さい。
マスクを着用することによって,皮膚が障害を受けた場合は,速やかに医師の診断を受けるとともに,その原因が下記のいずれであるか調査して適切な処置を行って下さい。
1)作業環境中の有害物質によるものか
2)過敏性の体質によるものか
3)マスクの材質によるものか
防毒マスクの保守管理上の留意点
1)予備の防毒マスク,吸収缶その他の部品を常時備え付け,適時交換して使用できるようにすること。
(2)使用後は粉じんおよび湿気の少ない場所で,面体,吸気弁,排気弁,しめひも等 の破損,き裂,変形等の状況およびろ過材の固定不良,破損等の状況を点検するとともに手入れを行うこと。
(3)破損,き裂もしくは著しい変形を生じた場合または粘着|生が認められた場合等に は,部品を交換するか,廃棄すること。
(4)点検後,直射曰光の当たらない,湿気の少ない清潔な場所に専用の保管場所を設 け,管理状況が容易に確認できるように保管すること。なお,保管に当たっては,積み重ね,折り曲げ等により面体,連結管,しめひも等について,き裂,変形等の異常を生じないようにすること。
(5)使用済みの吸収缶の廃棄にあたっては,吸収剤に吸着された有害物質が遊離し, または吸収剤が吸収缶外に飛散しないように容器または袋に詰めた状態で廃棄すること。
吸収缶を交換せずに使い続けると
吸収缶を使用し続けると、吸収缶内の吸着剤が有害ガスで飽和して、有害ガスが除毒されずにそのまま透過してしまう状態になります。この除毒能力が失われた状態を「破過」といいます。
破過した吸収缶は全く除毒能力がなくなるため、吸収缶が破過する前に新しい吸収缶への交換が必要です。
破過するまでの時間を「破過時間」といいます。破過時間は発生しているガスの「濃度」と「種類」に影響されます。また、
使用する環境の「温度」や「湿度」などにも左右されるため、破過時間(有効時間)に対して余裕をもって吸収缶の交換時期を設定する必要があります。
吸収缶の廃棄方法
1)廃棄する場合は、廃棄物及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)に従って適切に処理してください。
2)使用済みの吸収缶は,吸収剤に吸着された有害物質が遊離し,又は吸収剤が吸収缶外に飛散しないように容器又は袋に詰めた状態で廃棄してください。
3)廃棄物処理法で規定している特別管理産業廃棄物を規制値以上に捕集した吸収缶は ガスが漏れ出さないように処理をして、特別管理産業廃棄物として廃棄物処理法に 従って、適切に処理してください。
未使用吸収缶の保管について
◎外気と遮断し、乾燥した冷暗所に保管してください。
◎未開封の場合は、保存期限内であれば除毒能力はほとんど低下することはありませんが、吸収缶の袋に記載されている保存期限を経過したものは使用を避けてください。
防毒マスク/直結式小型:製造年月より2年
直結式:製造年月より4年
防毒用電動ファン付き呼吸用保護具/製造年月より2年
◎未開封でも袋に穴が空いていたり破れていると空気中の水分やガスを吸着してしまい除毒能力が低下、もしくは無くなっている場合がありますので、注意してください。
防毒マスク コロナウィルス対策
マスクをする理由は主に「感染者が他人に菌・ウイルスを移さないため」です。
ウイルスは不織布の隙間を通ってしまいますが、くしゃみや咳などで口から飛んだウイルス混じりの飛沫はマスクで抑える事が出来ます。つまり、ウイルスが他の人に向かって飛んでいって「飛沫感染」を起こしたり、手や物について「接触感染」を起こす事を防ぐ事になるんです。
防毒マスクがコロナウィルス対策に効果があると思っている方がおられますがコロナウィルスを防止する吸着缶はありませんので対策にはなりません。
現在、ネットで下記のような防毒マスクが販売されていますが効果は?です。
まとめ
防毒マスクには色々な商品が各メーカーから販売されているので予算、使用目的を明確にして購入してください。
中国製の価格が安い商品も販売されていますが『安物買いの銭失い』にならないよう、まして死んでしまっては元も子もありません、良く吟味してください。
*最後にその他の安全保護具については下記を参照にしてください。
関連記事:安全衛生保護具の正しい選び方、使い方
参考文献: