安全衛生改善計画書
職場における事故や災害を防止し、労働者の安全と健康の増進に努めるのは、事業者の責務です。(労働安全衛生法第3条他)
しかし、実際に何を実行すれば安全や健康が増進できるのか、は、企業の規模や、各企業が持つ各々の事情などもあり、単純には決められないものです。
そこで、 厚生労働省は、安全衛生活動を具体的に実行し、向上させるために「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」の構築についての指針を示し、導入を勧めています
このシステムは、「安全衛生計画」の作成(Plan)、実施(Do)、評価(Check)および改善(Act)を中心としており、安全衛生水準の向上には「計画」が重要であると明示されています。
積極的にOSHMSを導入し、安全衛生計画書を作成・実施した事業所などからは、実際に労働災害がゼロになったという事例も報告されています。
(社)安全衛生マネジメント協会サイトから下記のような安全衛生計画書チェックシートのダウンロードできます。

安全衛生計画書チェックシート
1. 安全衛生改善計画書の目的
- 労働災害や職業病の防止
- 労働環境の改善
- 法令(労働安全衛生法など)への適合
- 労働者の健康維持・向上
- 企業の社会的責任(CSR)やリスク管理の一環
2. 計画書の主な内容
安全衛生改善計画書の具体的な内容は、業種や職場環境によって異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。
(1) 事業所の概要
- 会社名・事業所名
- 所在地
- 業種
- 従業員数
- 安全衛生管理体制(安全管理者・衛生管理者・産業医など)
(2) 現状の課題と問題点
- 過去の労働災害の発生状況
- 安全衛生パトロールや点検結果
- 労働環境の評価(騒音・粉じん・化学物質など)
- 労働者の健康診断結果の分析
(3) 改善目標
- 労働災害ゼロの達成
- 健康リスクの低減(過重労働対策、メンタルヘルス対策など)
- 職場環境の快適性向上(照明、換気、温湿度管理)
(4) 改善策の具体的内容
- 設備・機械の安全対策(ガード設置、点検の強化)
- 作業手順の見直し(リスクアセスメントの実施)
- 労働者への教育・訓練(安全講習、健康管理研修)
- 労働時間管理の適正化
- 職場の整理整頓(5S活動の推進)
(5) 実施スケジュール
- 計画の実施期間(短期・中期・長期)
- 改善策ごとの実施時期
- 進捗管理の方法
(6) 責任者と実施体制
- 安全衛生管理者の指名
- 安全委員会・衛生委員会の設置・運営
(7) 評価とフォローアップ
- 計画の効果測定(事故発生件数の推移、従業員満足度調査)
- 必要に応じた計画の見直し
- 継続的な改善活動
3. 法的義務と関係法令
安全衛生改善計画書の作成は、法的に義務付けられる場合もあります。例えば、以下のようなケースでは行政指導や法律に基づく義務として計画書の提出が求められることがあります。
-
労働安全衛生法(労基法関連)
- 安全管理者・衛生管理者の選任義務
- 特定の業種や規模における安全対策の義務化
- 健康診断やメンタルヘルス対策の実施義務
-
労働災害発生時の指導
- 労働基準監督署からの指導により改善計画の提出を求められる場合
4. 作成のポイント
- 実現可能な目標を設定:抽象的な目標ではなく、具体的な数値や期限を設定する
- リスクアセスメントを実施:危険要因を洗い出し、優先順位を決める
- 従業員の意見を取り入れる:現場の声を反映し、効果的な改善策を策定する
- 継続的な改善:PDCAサイクルを回しながら定期的に見直す
5. まとめ
安全衛生改善計画書は、単なる形式的な書類ではなく、企業の安全文化を高め、労働環境を改善する重要なツールです。労働災害を未然に防ぐため、具体的で実行可能な計画を策定し、継続的な取り組みを行うことが求められます。
安全衛生の向上は、従業員の健康や生産性の向上にもつながり、結果として企業全体の利益にも貢献します。