ヒューマンエラーは「意図しない結果を生じる人間の行為」のことです。ヒューマンエラーを明確に説明する事はとても難しいのです。ヒューマンエラーの定義や分類は未だ確立していないようですが、分かり易くいうと、人間の行動あるいは決定のうち、「やるべきことが決まっている」ときに、「やるべきことをしない」あるいは「やってはならないことをする」と後からいうことといえるでしょう。
「やるべき事」には、規則や法律で決まっていること、常識や規範とされるもの、期待されるものなどがあり、また自分がやろうとしたことなども含まれます。ヒューマンエラーの結果は、人、モノ、環境、動物などの安全、健康、機能、不利益など広義の悪影響を与えるもので、ヒューマンエラーであるかどうかは、「見間違えた」、「やり間違えた」、「やり忘れた」などのように過去形で表される出来事(事象ともいいます)であって、さらに結果が好ましくない状態であるときに、後から言われるものです。
また、故意に「やるべきことをやらない」または「やってはならないことをする」は違反と呼ばれ、ヒューマンエラーとは別に考えることが普通です。
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事故を分析すると、多くの場合にヒューマンエラーが見つかります。労働災害の8割に人間の不安全な行動が含まれています(厚労省、労働災害原因要素の分析)。事故の原因は人間が直接引き起こすエラーだけではなく、人間を取りまく多くの要因、作業環境、施設や設備、教育訓練、企業の安全への取り組みなど多くの要因が含まれます。これらをヒューマンファクターといい、ヒューマンエラーを防止するときの大事な要因となることもしばしばあります。
ヒューマンエラーの代表的な分類のうち安全と関わりが深いものとしてしばしば紹介されているものに、行動からの分類(①やり忘れ、②やり間違い)人間の情報処理過程からの分類(①実行上の誤り、②意図の誤り、③記憶間違いによる誤り)、外部のきっかけを認知からの分類(SRKモデル)などがあります。
ヒューマンエラーの防止は難しいのですが次のような方策を採ります。
1)人が間違えないように人を訓練する。
2)人が間違えにくい仕組み・やりかたにする。
3)人が間違えてもすぐ発見できるようにする。
4)人が間違えてもその影響を少なくなるようにする。
人が行うのですから、どんなに人を訓練しても間違いは避けられません。人間は適度な緊張のときにはエラーの発生は少ないのですが、過度の緊張や緊張感が少なすぎるとエラーが多く発生します。また単調な監視業務では30分を超えると緊張が続きません。ヒューマンエラーは原因ではなく結果であると考えると納得出来るのでは無いでしょうか。こうした人間の特性を知りながら人の持つ柔軟性などの長所を活かす工夫が求められます。